中判(ブローニー)フィルムを持ち国際便に乗る際に必要な3つのこと

去年、夏の頭に海外に行って来ました。
この際、中判(ブローニー・120)フィルムを海外に持ち出したくて調べたことをまとめてみます。35ミリ判フィルムと共通する部分も多いですので宜しかったら読んでみてください。

結論として、私はブローニーフィルムを持ち出すことを諦めました。
なぜ、諦めなければならなかったのか?
むしろ、どうすれば(またはどういう場合ならば)、諦めなくても済むのか?

 

―なんで飛行機に載せることが問題なのか?
●荷物がX線検査にかけられるため
フィルムが限度を超えたX線を浴びると、最悪の場合光かぶりします。
かぶらなくても、粒状感が上がったり、コントラストが変化したりして、意図した作品に仕上がりません。
近年は、テロなどの影響で国内便国際便問わず検査が厳密になっています。

35ミリフィルムであれば有名な基準は、「ISO感度が800以下(1600とする会社もある)のものであれば、手荷物検査のX線はパトローネが弾いてくれるため安全である」とする航空会社が多いです。
ブローニーフィルムにはパトローネがないため、その限度は更に下がります。その限度は後述しますが実際に安心して預けることができるとは思えません。

私が35ミリのISO1600フィルム「NATURA」(Amazonリンクを張ってあるもの)や「SUPER PRESTO」(廃盤モノクロ)を北海道に持っていった際には、行きは手検査、帰りは宅配便で現地から自宅へ光を遮断する袋に入れて郵送する方法を取ったこともあります。(なぜ光を通さない袋を飛行機手持ちではなく郵送にしたのかは後述)

こちらのブログでは実際にかぶりが出たブローニーフィルムが掲載されています  ↓
「コウゼンダイゴ」さん 「 フィルムとX線検査 台湾 2008 」

 

―フィルムというものをもって渡航する際の前提(フィルムの種類、国内国際問わず)

●バゲッジ(預け入れ荷物)にせず、持ち込み荷物(手荷物)にすること
カバンやスーツケースごとフィルムを貨物室に預けてしまうと、預け入れ荷物として手荷物検査より強いX線を浴びることになります。

●鉛の袋(光を通さない袋)を使わない
私も貰い物の実物を持っていますが、廃盤になった「HAKUBA X線セフティケース」などの鉛の袋にフィルムを入れないでください。
このケースが活用されていた時代は、X線を通さない部分がある荷物を1つずつ厳密に検査することはあまりなかったそうです。
しかし前述のとおり今は、テロなどの影響で空港の検査が厳密になっており「X線を通さない部分がある」とされるとさらに強いX線を照射される可能性が非常に高いのです。
最悪の場合、別室に通されて話を聞かれるということも。そうなると光かぶりがどうのの問題では無くなってしまいます。

●カメラからフィルムを抜いておく
カメラに装填されているフィルムは出して見せることができません。
また、カメラはX線検査されますから、カメラの中でフィルムが露出した(撮影可能な)状態だとカメラごとX線照射された際に影響を受ける可能性が高くなります。
撮影後、コマが残っていても、空港の検閲を通る際には巻き上げてしまうことをオススメします。

 

―中判(ブローニー)フィルムを持ち国際便に乗る際に必要な3つのこと

●語学が堪能、もしくは最低限自分の要件を伝える語学力があること(主に英語)
これは言わずもがなですが……。
日本の出国や国内便搭乗のときは日本語が通じますから、比較的簡単なんです。私も国内便では何度か手検査に切り替えてもらっています。しかし問題は海外に行く際です。
一番シンプルな言葉は「These are films. No X-ray, please.」 
手検査(X線を通さない検査)のことは「hand check」または「hand inspection」と言うので、「”Hand check”, please.」というとスムーズかも知れません。

●ブローニーフィルムというものを説明できること
35ミリ判フィルムを持ち出す場合には、モノを見せれば大抵即座にフィルムだと理解されます。
しかし、マイナーなブローニーフィルムは聞いたことも見たこともない人が世の中に非常に多いのです。そういった方々には大体の場合「パトローネ」は通じません。「ブローニー」「中判」はもちろん「35ミリ」も通じません。
未開封で、「FUJIFILM」と書いてあっても「一つ開けてみせろ」となる場合があるようです。サイズ的に、薬などが入っているかもしれないと思われることがあるようなのです。

こんなことを言うと元も子もないのですが、全ては検査員の裁量・カメラの知識次第です。
ですから、先人たちの知恵として、カメラも持ち込み荷物にし、「これはこのカメラのためのフィルムです」ということをカメラを見せて説明するのも方法の一つのようです。

●検閲の回数を減らすために直行便を選ぶこと
後述しますが、富士フイルム曰く、ブローニーフィルムが実用レベルで耐えられるX線検査は、未現像状態合計四回までです。
その回数を減らすため、なるべく直行便を選んでください。
しかし、前述した「コウゼンダイゴ」 のフォトグラファー泉大悟さんの記述によると、直行便のある台湾へ行った際に光かぶりが起こった(X線照射2回)そうですので起こるときは起こってしまうのでしょうか……。

 

―富士フイルムのブローニーフィルムのX線検査に対する見解
カメラマン、栂嶺レイさんによるブログ「ちぎれ雲」さん「空港のX線手荷物検査でのブローニーフィルムの安全性」によると、以下のようです。

〜ここから引用〜

X線照射の強さにもよりますが、ブローニーフィルムの方が遮断するパトローネが無い分、影響を受け易い傾向にあります。従来型の手荷物検査機ではカラーネガよりはリバーサルの方がカブリ難いと言う長年の知見,データはありますが、やはり何回も積算照射されると影響が大きくなります。
1回照射での微妙な変化(最高濃度低下,粒状劣化)は比べてやっと分かる程度ですが、実用的には4回までは大丈夫だと考えます。その時の照射強度によりこれ以降の照射回数では、更に感度低下等の何かしらの影響が出てもおかしくないと推定します。
これからも大変ですが、通関時には頑張って手検査を御主張願います。
間違えても、鉛の防止袋に入れたり,預け入れ荷物の方に回したりしないように願います。返って取り返しのつかない事に成り得ます。

〜ここまで引用〜

また、こちらも参考になさってください。
富士フイルム「フィルム110番―空港でのX線検査―」

 

―まとめ
富士フイルムは以上の見解を示していますが、前述のようにたった2度のX線照射で光かぶりしてしまっている実例があるのです。

正直申し上げて、そのことが決め手になり、フィルムを海外に持っていくのを諦めました。
私の旅行はドバイ経由でしたので、関西国際空港→ドバイ→アテネ→サントリーニ島(現地)→アテネ→ドバイ→関西国際空港と6度の検査がありました。
「6度の検査を手検査でパスする自信と運」が私にはないと判断したのです。
勿論世の中の多くの方は、手検査を主張することでその後X線検査をパスすることに成功しているようですので、直行便などで回数が少なく、パスする自信がある方は試してみてください。

一番最良な方法は、フィルムを現地の信頼出来る場所で手に入れて現地の信頼出来る施設で現像することですが、現実的には日程的にも地理的にも難しいことが多いですしね。

フィルムの表現力で海外の美しい景色を撮りたい。
多くの人がそう考えることでしょう。そんな些細なことさえ許されない世の中なのだなと思うと、少し世知辛いですね。

▼今回持っていくのを諦めたフィルムは、ベルビア、プロビアにアスティアでした▼
 

2 thoughts on “中判(ブローニー)フィルムを持ち国際便に乗る際に必要な3つのこと

  1. のらいぬ

    情報まとめ、すごく助かりました。
    フィルム買っちゃったけど…。やっぱりブローニーは危険なんすね…。
    ともだちにも言わないとなと思いました。

    私も今年は10年目になりました。
    またご一緒に撮影できる日があれば幸いでーす(*゚∀゚)

    • ヒロセ

      のらいぬさんお久しぶりです!
      私もフィルム買ったあとに調べて知ったので、全部感光で爆死ということは避けられましたが結構ショックでした。
      こういうとき英語ができないことを悔やみます(´・ω・`)

      また一緒に撮影したいですね!

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