クリップオンストロボの選び方-種類(グレード)編

クリップオンストロボ(外付けフラッシュ)の選び方について、メーカーの垣根を超え、初心者向けにこってり濃厚にまとめました。ストロボのグレードの選び方について。

2015/05/26に、クリップオンストロボ(外付けフラッシュ)の選び方について、「クリップオンストロボの選び方-メーカー編」という記事を書きました。
拍手などで反響を頂けましたので、2015/11/28に最近流行している「多灯対応改訂版」として改訂しました。

今回はその続きといいますか、後編? として、種類(グレード)の選び方です。
どのメーカーの、どの種類のストロボを買ったらいいかが決まったら、自ずとご自分にあったストロボが選べるはずです! ということで、さあ! れっつポチッとな!

あまり詳しくない方にもなるべくわかりやすく説明していきます。
時間がない方は、太字下線のところだけ斜め読みして頂ければだいたいわかるようになっています。

ちなみに、Nikonミドル機のSB-700に関しましては買った際にちょっとしたレビュー記事を書いているのでよろしかったらご参照ください。


 

「ストロボの種類(グレード)はどれがいいの?」

各メーカーから複数のストロボが出ていることが多いけど、どう違うんだろう? ということについてまとめました


前回の記事やそのほかのいろいろな情報を参考にして頂いて、ストロボのメーカーを絞ることができたら、次は種類・グレードを選びましょう。
先ほども書きましたが、例えば「純正品の、こういう機種…ということは、NikonのSB-700だな」というように、メーカーと種類が絞れれば、あなたにあったストロボは自ずと決まります。たぶん。

もちろん、メーカーによっては違う場合もありますので、説明のおおかたが「多くはこうである(ただし例外もある)」という感じになることを念頭に置いてください。

●種類・グレードってなんなの?

多くのメーカーのストロボは、価格帯や機能、大きさなどのバランスで種類・グレード分けをしてリリースされています。
ここでは、純正品を例にとって説明していきます。


 

●エントリー機種

具体的にはこのあたりの機種です。もちろん他のメーカーからも発売されています

廉価である:お値段は一番お手頃。わかりやすい

軽量コンパクト:本体がコンパクトであることから、カメラにつけて撮影をしても邪魔になりにくい、手ブレのもとになりにくい。持ち運びが楽。
また、被写体の影に隠したりして補助光として使うときにも便利です。

ガイドナンバー(GN)が小さめガイドナンバーが小さめです
ガイドナンバーというのは式で求められる「ストロボの発光量」です。大きければ大きいほど遠くまで光が届きます。
同じガイドナンバーのストロボでも、ISO感度を上げる、絞りを開けることにより明るく撮影することが可能です。しかし、当然、ノイズが多くなったりボケ具合が変わってきたりなど、撮影意図が崩される可能性があります。
それに、撮影したい被写体の大きさや距離、ストロボの使い方(メインライトなのか、補助光なのかとか)によって必要なガイドナンバーは異なってきますので、一概に明るければいいという問題でもなく、一考の価値ありかと思います。

割と失念しがちなのですが、別々のGNのストロボを同時に使用して同じくらいの明るさで光らせたい場合「設定を同じ発光量(例:1/2)に設定した」としても、それは各々のストロボのMAXの光量に対する1/2なのであって、同じ明るさにはならないことを念頭に置いてください。
同じ明るさで同時に複数のストロボを光らせたいときには、GNから計算をしてマニュアル設定するか、フラッシュメーター(ストロボの光量を測ることができる露出計)を使うしかありません。しかし、メーカーによってGNの測り方が違ったりするんですよねえ……。なので、ぶっちゃけ同じGNのストロボで揃えるのが一番簡単です。はい。
フラッシュメーターには具体的にこういった機種があります。

チャージタイム(リサイクルタイム)が長い:小さめのエントリー機種は、本体を軽量コンパクトにするために入れる電池の数が少ないことが多く、そのため同じ光量で光らせた際のチャージタイム(リサイクルタイム)が長くなる傾向にあります
チャージタイムというのは一度ストロボを発光させた後にもう一度発光させる電力をためるのに必要な時間です。
「自分の使ってるストロボにもそんなのあるのかな?」という方は、ストロボの説明書を読んで、チャージが終わったら音が鳴るように設定をしてみてください。ものによりますが、多くのストロボがこの機能を備えています。「パシャッ(発光)…ピー!」ってなると思うんですけど、その…のところがチャージタイムにあたります。
エントリー機の多くのストロボは単4乾電池数本、ミドル機の多くのストロボは単3乾電池を数本使用するものが多く、グレードが上がると一般的にエネルギー効率がよくなります。GNとのバランスにもよりますが。
一部の上位ストロボのようにリチウムイオン式であったり外部バッテリー式であったりすれば、エネルギー効率がさらに良くなり、チャージタイムは短くなります。
たぶん、プロが撮影スタジオにおいて使用するAC接続のジェネレーター&ヘッド式のモノブロックストロボが最短なんじゃないかなあ。でも、個人でそこまで必要な方はこの記事を読んでいないような気がします。

チャージタイムの長さは、個人でドールとかフィギュアとか「動かない・小さいもの」を撮っている時には特に気にならない人が多いのではないでしょうか。光量も控えめで済みますので、チャージタイムも自然と短くなりますし。周りを見ていても、あんまり気にしないでいい印象です。
しかし、人間のモデルさんなど大きなものを撮影する際には光量を上げることが多いです。そして、モデルさんや手慣れたコスプレイヤーさんなどは「パシャッ、…ピー」「パシャッ、…ピー」というシャッターの合間に毎回ポーズや表情を変えます。ですので、場合によってはチャージタイムが長いと、リズムが崩れてしまったりいい表情を逃したりということが起こる可能性があります。
……というのが一般論なんですけど、私はミドル機種でそんなにチャージタイムが気になった実感は今のところありません。どうなんでしょうかねえ。

物理的に機能が限られている:物理的に小さくするために機能が限られています
ヘッドが可動しないものや可動域が限られている(上下にしか動かないなど)機種が多く、形状上、キャッチライトパネル、ワイドパネルが省略されていたりします。背面液晶がないものも多いです。
ヘッドが可動しなかったり可動域が限られていると光の方向を変えることが難しくなります。
キャッチライトパネルは、モデルさんの目にアイキャッチを入れるための白い板です。
ワイドパネルは、広角レンズに対応するために光を拡散させるパネルです。

背面液晶がないものは、全ての操作をカメラ側で行う必要がある機種、ストロボにボタン式で直接操作ができる機種があります。
しかし、液晶式は情報量が多く操作が煩雑になりがちですので、液晶がないほうがわかりやすいと感じるユーザーさんもいます。

以下は、液晶のあるストロボと液晶式のストロボの例です。液晶がないストロボの場合、ランプが点灯して現在の設定がわかるようになっている機種が多いです。この画像の機種では、TTLまたはマニュアルで六段階の発光量に調整することができます。
液晶式の場合は発光量だけでなく、より細かい設定をすることができるものが多いです。しかし機種によってインターフェイスが全然違ったりするので、慣れないストロボを直感的に使うのは少し難しくなってきます。

DSC_1891

操作がシンプル:上位機能が省略されており、そのため初めての人でもわかりやすいです
例えば、発光量が何段階かのなかから選択するだけのものや、TTLによるオート発光のみの機種、TTLのオート発光量から露出補正をするだけのものもあります。
シンプルになればなるほど、さっと設定して撮影するのには向いていますので、屋外でのポートレートにはシンプルなTTL対応ストロボを使う、という方もいらっしゃいます。
以前に比べ、エントリー機種でもTTL対応の機種(カメラと連動してオートで発光量を決めてくれる機能)は増えてきていますが、マニュアル発光しかしないものももちろんあります。


 

●ミドル機種

具体的にはこのあたりの機種です。もちろん他のメーカーからも発売されています

中くらいのお値段一番人気:お値段は中くらい。一番人気のグレード。日本人は真ん中くらいが好き。私も。

軽くないし大きすぎもしない:エントリーより結構大きい。ハイエンド機種よりは一回りくらい小さい。

ガイドナンバー(GN)も中くらい:まあ、だいたい中くらいです。私は個人的に光量で困ったことはないです。

ハイエンドに迫る機能:機能的にはハイエンドに迫ります
ヘッドは上下左右に広く稼働するものが増え、キャッチライト・ワイドパネルを備えた機種が増えます。オートパワーズームに対応したり、背面液晶もあり、設定の幅もエントリーよりだいぶ増えていることが多いでしょう。
「機能が多くなったエントリー」というより「やや控えめなハイエンド」といったほうがいい機種が多いです。
このあたりから、ハイスピードシンクロに対応している機種も増えてきます。水しぶきを止めて撮りたい、髪の毛が風になびくのを撮りたい、そんな人はチェックしてください
機能といえば、ストロボって思ったより熱を発するので継続的に強い光を出し続けていたりすると本体やカラーフィルター、ディフューザーなどが熱で溶けちゃうことがあるんです……これは結構知られていなくて怖いです。過熱防止機能が付いているものも増えてくるので、「フル発光で酷使したい!」的な方はチェックしてみてください。

同梱品が充実:ハイエンド機と同等の同梱品が付属する機種が多いです
例に挙げるのは私が持っているNikon SB-700の場合ですが、カラーフィルター(電球や蛍光灯にホワイトバランスを合わせることができるオレンジと緑のフィルター)、バウンスアダプター(ディフューザー的なもの)、ケース、スタンドなどが付いてきたりします。他のメーカーでも、エントリー機種に比べて同梱品が充実してきます。

こちらはSB-700の同梱品の一部。
 


 

●ハイエンド(フラッグシップ)機種

具体的にはこのあたりの機種です。もちろん他のメーカーからも発売されています

一番高価:高い。でもそれに見合った価値があるので、必要な人は躊躇わずにポチってる印象
NikonのSB-910の定価はななまんにひゃくえんです。ななまんにひゃくえん。まあ、定価で買うことってあんまりないんですけどね。

でかい。重い。:ミドル機より一回りから二回り大きく、重い。電池がたくさん入っていたり、発光部分が大きかったりするんです
Nikonの場合、SB-700は電池込み450g、SB-910は電池込み510gです。人によってはあんまり気にならない差かもしれません。

ガイドナンバー(GN)が一番大きい:そのメーカーでGNが一番大きい事が多いです
強い光を放ちます。そのため、発光部分が大きめにとってあったり、電池がたくさん必要だったりします。
電池の数やサイズが同じ場合、GNが大きくなることによって最大光量発行時のチャージタイム(リサイクルタイム)はミドル機種よりも長くなる場合があります。

最高の機能:ミドル機を凌ぐ最高の機能
カスタムメニューの数や、自動調光のモードが増えていたりします。ミドル機の機能がさらに増強されている感じの機種が多いです。

同梱品が充実:同梱品は
Nikonの場合、ミドル機とほぼ同等です。


●まとめましょう

エントリー機:安い。簡単。コンパクト。機能は省略気味。補助光などにも。

ミドル機:中くらいの価格帯。GNが大きくなる。機能は結構充実

ハイエンド機:高価。GNが一番大きい。機能が一番充実している。

前回と同じく、価格.comからの資料でシメましょう。

スクリーンショット 2015-12-07 1.49.21

フラッシュのカテゴリーで価格帯的な人気グラフを見ると、やはり中くらいのあたりに集中しています。
日本人はやっぱり中くらいが好き?

素人ののらくら機材話、ストロボ(フラッシュ)についてはこれで終わりかなって思ってます、お付き合い頂きありがとうございます。
また反応があれば書いたり書かなかったりするかもしれないので、役に立ったよ〜的な人は拡散でもして頂ければ、がんばるかも。ご協力お願いします。